協会案内
会長ごあいさつ
一般社団法人日本鋼構造協会会長 緑川 光正
明けましておめでとうございます。2025年は協会設立60周年の節目にあたり、新たな思いで鋼構造の更なる普及・発展を目指す年となります。新年を迎えるにあたり、抱負を述べさせて頂きます。
さて、2023年度からスタートした第10次中期3カ年計画は、総仕上げの年を迎えます。この中期計画で重点戦略の一番目に掲げたのが、「カーボンニュートラルを踏まえた新たな技術戦略の具現化」です。協会内に鋼構造カーボンニュートラル特別委員会を立ち上げ、「鋼構造の特性を踏まえた環境負荷評価方法」と「地球環境に貢献する鋼構造新技術」に関する検討を行っております。環境面での優位性を鋼構造の新たな魅力として位置付け、脱炭素・循環型社会の実現に資する提言を纏めて行きます。今年の鋼構造シンポジウムでは、60周年特別企画の一環として本委員会の成果報告を行う予定です。
第二の重点戦略は、「国土強靭化、生産性向上、海外発信に係わる取り組みの加速」で、種々の研究委員会にて、社会ニーズに応える取り組みを精力的に行っており、続々と成果が公表されつつあります。
例を幾つか紹介します。長周期地震動対策としては、建築研究所等との共同研究で、エネルギー法の枠組みに部材の低サイクル疲労特性評価を組込んだ新しい設計法を確立し、昨年の鋼構造シンポジウムで報告しました。また、高強度鋼CFT柱の低サイクル疲労特性に関する研究も順調に進捗中です。施工合理化に関しては、既に公表した高強度鋼材の溶接部に対する必要性能に関する研究成果を反映させながら、JSS規格「建築鉄骨溶接部の機械的性質の標準試験マニュアル」の改定に取り組んでおり、2024年度内に刊行予定です。コラムの溶接施工合理化に関しても研究成果が蓄積されており、2025年度にテクニカルレポートとして刊行する計画です。
本協会の刊行物である「鋼構造物の疲労設計指針・同解説 -付・設計例-」については、最新の知見を織り込んだ改定作業を実施中です。また、ステンレス分野では、鋼橋への適用拡大を目指し、2017年度より土木研究所等との共同研究を実施中で、まもなく成果を纏めるフェイズに入ります。
国際標準化については、我が国の優れた鋼構造技術を海外発信するためのプラットフォーム構築を念頭に展開中です。現在、上述の「標準試験マニュアル」をベースとする国際標準案をISOに提出し、審議が順調に進んでおります。本件の成案化を進めつつ次に放つ矢を考え、日本発・世界初の技術による「攻め」の標準化活動を推進いたします。
第三の重点戦略は、「未来を担う若手の育成に係わる施策の戦略的推進」です。人材育成・技術伝承の観点から、鋼構造未来戦略小委員会や今中期とともに始動した鋼構造溶接技術小委員会では、いずれも意欲のある若手が中心となって次世代の技術戦略を議論しております。学生を対象に鋼構造の魅力を伝えるPR活動にも着手しました。若い人の目に訴えるため動画アーカイブを開設する計画です。一方、鋼構造研究助成事業では、この20年間で108件が採択され、若手研究者の育成に貢献しています。昨年度は制度改革を行い、助成総額を従来比の2.5倍規模へ拡大し、助成対象として国際会議への参加支援を追加しました。
2009年にスタートした鋼構造技術者育成講習会は、累計3万名を超える技術者に参加頂き好評を博しております。昨年は、座学講義の半分をハイブリッド開催とし、地方会員の方にも受講頂けるようにしました。さらに、実務的な技術者資格として高い評価を頂いている土木鋼構造診断士と建築鉄骨品質管理機構を運営し、鋼構造の安全・安心と品質確保に寄与しています。コロナ対策として取り入れたオンライン講習等の仕組みを定着させ、地方の受験者へのサービス向上に努めて参ります。
協会ホームページでは、2023年からストレージ機能とアーカイブ機能を主軸とする新規サービスを開始しました。このストレージ機能を活用したペーパレス化を推進し協会運営合理化を図るとともに、アーカイブのコンテンツ整備を継続いたします。
本年は、これらの成果をもとに次期中期3ヵ年計画の策定に取り組み、鋼構造の輝きを持続させる戦略を立案し、新たなアクションプランを提示します。会員の皆様、関係各界の皆様には、引き続き、協会活動へのご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
(以上、2025年 年頭の挨拶より)
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